未来につながる豊かな知識
応用化学コース
無限の可能性をもつ
高分子の世界へようこそ!
三ツ石 方也先生
東北大学大学院工学研究科 応用化学専攻
環境資源化学講座 機能高分子化学分野
「高分子」とは漢字のとおり、分子がたくさんつながったものです。
例えば、あまり聞き馴染みはないかもしれませんが、吸水ポリマーという言葉は聞いたことがあるでしょうか?
高吸水性高分子は自身が変形し、数百倍から約千倍までの水を吸収して保持することができます。
高分子に親水性という水とくっつきやすい性質を持たせることで、水を吸水しその状態を保つことのできるゲルになるので、紙おむつなどに使われています。
実のところ、私たちの身の回りは高分子だらけで、この高分子の最高傑作とも言えるのが私たち人間です。私たちが食べるもの、例えば、お肉も高分子です。高分子として取り込まれた肉は体の中で消化され、低分子になり、栄養として吸収され、まさに血となり肉となり、体という高分子をつくり上げます。高分子を用いてこれまでにさまざまなものづくりがなされてきました。プラスチックやペットボトルで使われているPETも高分子です。高分子で「ものづくり」をすることにより、軽くて丈夫な入れ物を私たちは使うことができます。
高分子研究の歴史は100年を超え、合成繊維や有機ガラスも私たちの生活に欠かせないものとなりました。私たちの研究では、この長年研究されてきた高分子をナノテクノロジーと組み合わせることに取り組んでいます。これにより、例えば高分子がもともと可能にしていた「撥水(はっすい)」という水をはじく機能を「超撥水」というレベルに向上させたり、逆にあっという間に水が馴染むような「超親水」表面をつくりあげ、超親水性や超親油性の表面に加工したりできます。
表面をナノサイズでコントロールすることにより、これまでになかった機能がうまれ、撥水性と親油性をあわせ持つハイブリッド材料も可能にできるのがナノテクノロジーです。
私たちの研究室では表面にナノメートルサイズの高分子超薄膜(ナノシート)を作る高分子膜の研究をしてきました。高分子ナノシートは材料の表面に分子1つ分という究極の薄さで膜を集積します。薄いのに接着・吸着能力があるとか、発光するとか、強誘電性があるなど高い機能を持たせることができるので、材料革命を起こすことができるかもしれません。
例えば、一見、透明なガラスのようだけど、あることをするだけで発光する素材であれば、省エネにつながるかもしれません。また、ナノサイズにすれば複合的な機能を持たせることができるかもしれません。
ナノサイズとは1ミリの100万分の1のこと。私たちの髪の毛の直径が0.1ミリメートルくらいなので10万分の1の小ささです。もう想像がつかないくらい小さいですね。こんな小さな世界ですが、材料革命を起こすくらいの可能性を秘めています。
夢の物質「セルロースナノファイバー」をホヤから作る!
みなさん、ホヤを知っていますか?東北大学があるここ宮城県はホヤの水揚げ量全国一位を誇ります。以前は多くのホヤが韓国へと輸出されていましたが、震災後は輸入停止となり、日本国内の消費に切り替わりました。ホヤの殻は硬く、食べられないので廃棄していますが、このホヤからもセルロースナノファイバーが取れます。
セルロースナノファイバーとは主には植物の細胞壁に由来するセルロースからなる直径数nmから100nmの繊維状物質のことで、繊維素材としては軽くて、強く、弾力性があり、重さは鋼鉄の5分の1で強度は5倍とも言われています。さらに熱による変形が少ないため、新材料として大きな注目を集めています。
宮城県のホヤからセルロースナノファイバーを取り出すという発想は以前にバングラデシュから留学していた学生の研究からヒントをもらったものです。彼は自国で多く生産されるジュート(黄麻)からセルロースナノファイバーを取り出し研究対象としていました。すでに自国に大量に存在するものからものづくりをするということは地域の資源を活かすことにつながります。彼の研究はセルロースナノファイバーを使って、世界中で問題になっている海洋汚染の問題に取り組めないかという発想からでした。例えば、タンカーの事故などで流れ出た重油を水と油に分離させるような親油性と、撥水性の機能をあわせ持つハイブリッド材料があれば、海洋汚染問題を解決できるかもしれません。重油を吸収しながら、海水だけを濾すような機能を持たせるのです。彼の夢が実現すれば、世界中の海洋汚染問題に役立つかもしれません。一方、ホヤは未知の可能性を探っているところです。調べてみるとホヤのセルロースナノファイバーの長さは他の材料よりも長いことがわかりました。これでどんな機能を引き出せるのかをこれから紐解いていく段階に入ります。ホヤから取ったセルロースナノファイバーがここ宮城でイノベーションを起こす日がくるのを楽しみにしています。
三ツ石先生からのメッセージ
実験をしていると問題にぶつかることがたくさんあります。一人一人に持ち味があり、自分なりの答えを導く力を身につけてほしいと思っています。研究室の中でお互いを認めあうことで、人間の体のようにそれぞれの部分(個性)が調和すると、予想もしなかった結果が得られることがよくあります。
高分子の世界へようこそ!
東北大学大学院工学研究科 応用化学専攻
環境資源化学講座 機能高分子化学分野
「高分子」とは漢字のとおり、分子がたくさんつながったものです。
例えば、あまり聞き馴染みはないかもしれませんが、吸水ポリマーという言葉は聞いたことがあるでしょうか?
高吸水性高分子は自身が変形し、数百倍から約千倍までの水を吸収して保持することができます。
高分子に親水性という水とくっつきやすい性質を持たせることで、水を吸水しその状態を保つことのできるゲルになるので、紙おむつなどに使われています。
実のところ、私たちの身の回りは高分子だらけで、この高分子の最高傑作とも言えるのが私たち人間です。私たちが食べるもの、例えば、お肉も高分子です。高分子として取り込まれた肉は体の中で消化され、低分子になり、栄養として吸収され、まさに血となり肉となり、体という高分子をつくり上げます。高分子を用いてこれまでにさまざまなものづくりがなされてきました。プラスチックやペットボトルで使われているPETも高分子です。高分子で「ものづくり」をすることにより、軽くて丈夫な入れ物を私たちは使うことができます。
高分子研究の歴史は100年を超え、合成繊維や有機ガラスも私たちの生活に欠かせないものとなりました。私たちの研究では、この長年研究されてきた高分子をナノテクノロジーと組み合わせることに取り組んでいます。これにより、例えば高分子がもともと可能にしていた「撥水(はっすい)」という水をはじく機能を「超撥水」というレベルに向上させたり、逆にあっという間に水が馴染むような「超親水」表面をつくりあげ、超親水性や超親油性の表面に加工したりできます。
表面をナノサイズでコントロールすることにより、これまでになかった機能がうまれ、撥水性と親油性をあわせ持つハイブリッド材料も可能にできるのがナノテクノロジーです。
私たちの研究室では表面にナノメートルサイズの高分子超薄膜(ナノシート)を作る高分子膜の研究をしてきました。高分子ナノシートは材料の表面に分子1つ分という究極の薄さで膜を集積します。薄いのに接着・吸着能力があるとか、発光するとか、強誘電性があるなど高い機能を持たせることができるので、材料革命を起こすことができるかもしれません。
例えば、一見、透明なガラスのようだけど、あることをするだけで発光する素材であれば、省エネにつながるかもしれません。また、ナノサイズにすれば複合的な機能を持たせることができるかもしれません。
ナノサイズとは1ミリの100万分の1のこと。私たちの髪の毛の直径が0.1ミリメートルくらいなので10万分の1の小ささです。もう想像がつかないくらい小さいですね。こんな小さな世界ですが、材料革命を起こすくらいの可能性を秘めています。
夢の物質「セルロースナノファイバー」をホヤから作る!
みなさん、ホヤを知っていますか?東北大学があるここ宮城県はホヤの水揚げ量全国一位を誇ります。以前は多くのホヤが韓国へと輸出されていましたが、震災後は輸入停止となり、日本国内の消費に切り替わりました。ホヤの殻は硬く、食べられないので廃棄していますが、このホヤからもセルロースナノファイバーが取れます。
セルロースナノファイバーとは主には植物の細胞壁に由来するセルロースからなる直径数nmから100nmの繊維状物質のことで、繊維素材としては軽くて、強く、弾力性があり、重さは鋼鉄の5分の1で強度は5倍とも言われています。さらに熱による変形が少ないため、新材料として大きな注目を集めています。
宮城県のホヤからセルロースナノファイバーを取り出すという発想は以前にバングラデシュから留学していた学生の研究からヒントをもらったものです。彼は自国で多く生産されるジュート(黄麻)からセルロースナノファイバーを取り出し研究対象としていました。すでに自国に大量に存在するものからものづくりをするということは地域の資源を活かすことにつながります。彼の研究はセルロースナノファイバーを使って、世界中で問題になっている海洋汚染の問題に取り組めないかという発想からでした。例えば、タンカーの事故などで流れ出た重油を水と油に分離させるような親油性と、撥水性の機能をあわせ持つハイブリッド材料があれば、海洋汚染問題を解決できるかもしれません。重油を吸収しながら、海水だけを濾すような機能を持たせるのです。彼の夢が実現すれば、世界中の海洋汚染問題に役立つかもしれません。一方、ホヤは未知の可能性を探っているところです。調べてみるとホヤのセルロースナノファイバーの長さは他の材料よりも長いことがわかりました。これでどんな機能を引き出せるのかをこれから紐解いていく段階に入ります。ホヤから取ったセルロースナノファイバーがここ宮城でイノベーションを起こす日がくるのを楽しみにしています。
三ツ石先生からのメッセージ
実験をしていると問題にぶつかることがたくさんあります。一人一人に持ち味があり、自分なりの答えを導く力を身につけてほしいと思っています。研究室の中でお互いを認めあうことで、人間の体のようにそれぞれの部分(個性)が調和すると、予想もしなかった結果が得られることがよくあります。